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笑いと喜びですぐ覚える
ハンコやシールの積極的な活用も
”やる気”出させる工夫
東海林太郎 小学校教員
2000年 5月17日(水)産経新聞静岡版”学びと教えの現場から”掲載
漢字テストのコツ
覚えることを苦手とする子。そういう子でも、「すぐ覚えちゃった」と言うことが ある。
かつて私は、紅茶で使う「ティーバッグ」を「ティーバック」と教えてしまったこ とがある。誤りに気づかず、「紅茶とパンツの二つの意味があるんだよ」と説明し、 翌日訂正した。子供たちはすぐ覚えちゃった。「バック」の方まで:(ヨカッタノカ ナア)。
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漢字も同様、すぐ覚えてしまうことがある。そうなる条件は何かー。二つの例から お考えいただきたい。
例1 三年で「鼻」を習う。「自分の田んぼに鼻を二本たらす」と語りながら黒板に 書く。これだけで子どもたちはすぐ覚える。
例2 転入生が来ることになった。私が名前を黒板に「○○正之」と書く。男子か ら、「女の子かあ。まさえ、だってえ」と不満の声が挙がる。私は「君」を付け足 す。すると:
「男?まさえなのに」
「『え』に似ているけれど、これは漢字です。『ゆき』と読みます」
「やったあ!男だあ」
こうして「之」をすぐ覚え、子供たちは一年後も忘れていなかった。
■積み重ねが弾みを■
すぐ覚えてしまう条件とは何だろうか。
それは笑うことである。
笑うと子供たちは一度で覚える。ウレシイものだ。ただ、喜びを味わえるのは年に 一、二度。漢字の勉強が「織り姫と彦星」では、しようがない。
そこで私は、覚えたかどうかのテストをする。四年生では十問。ささやかな十点満 点だが、この積み重ねが子供たちに弾みをつける。だから私は週に一度、漢字テスト を行う。
ポイントは出題範囲を限定すること。手も足も出なーい。右も左もワッカンナーイ !という子にとって、せまーい(がいくらかは手応えがある)出題範囲というのは一 筋の光明、闇夜の一灯である。
努力しただけは点が取れる。これは子どもにとっては嬉しかろう。しかも回を重ね るにつれ、どの子も得点が上がっていく。
私は十点を取った子どもの笑顔を、はしゃぐ姿を見るのが好きだ。「ああ、なぜこ んなところを!」と八点で悔しがる。その顔もいい。「前は五点でも平気。今は八点 でも悔しがる。これを進歩と言うんだあ」とコメントする。
ーと書いておきながら、実は、評言に窮することがある。そこを見越して登場する のが学校出入りの業者のミナサン。割と教師の保持率の高いのがハンコ。次いでシー ル。そこには様々な絵柄に「ヤッター」「もう一息」「がんばれ」などの惹句 (じゃっく)が彫り込まれている。至れり尽くせりである。
だが私は、どのハンコ、シールを選ぶか考えるより書いた方が速いので、現在はあ まり使わなくなった。
ところが、子どもはハンコ、シールを好む。「ワーイワーイ」と小躍りする子。
「××ちゃんはどんなのが付いてるの?」と隣をのぞき込む子:。
こういうニコニコを見ると付けようと思う。「ヨロコブカラナァ。デモ、時間ガカ カルナァ。」
■安堵の表情がいい■
こうした教師のジレンマを解消するドリルが開発された。シール付きの漢字ドリル である。自分で正解した問題にシールを貼るようになっている。不正解のところは貼 れない。貼りたいから勉強する。
翌日、不正解のところを再テストして合格。シールを貼る。その顔がいい。安堵 (あんど)の表情を浮かべる子すらいる。
昨年、漢字テストで十点満点を二十数回もとり続けた子がいる。
親御さんから「すごい」「がんばったね」「うれしい」といった毎回違う評言が送 られた。どんなにその子の励みになったことだろうか。“やる気”を起こす働きかけ は、さまざまになされていいのだから。
でも、この子が九点を取ったときの親御さんの評言が「ほしい」だったのは「惜し い」ことであった。